
今年から品質月間委員会の委員長に就任しました東京工業大学の圓川です。
3月11日に発生しました東日本大震災は、わが国に甚大な被害をもたらしました。被災された多くの方々に心よりお見舞いを申し上げます。
今回の震災で大きな被害を受けた地域は、自動車や電機など、わが国主要産業にとっての重要な部品供給拠点となっていた関係上、多くの企業が、サプライチェーンの広域かつ重層に亘る被害からの復旧、原材料・部品の調達、品質の確保などに多大な困難を経験されたことと存じます。
しかし私たち日本人は、このような日本全体を揺るがす大きな危機に直面すると、一致団結してこの危機を克服するだけでなく、この危機を新たな革新・奇跡を生み出す力に変え、これを有効に活かしていく稀有な能力を有していると言われてきました。
過去を振り返れば、敗戦という危機を迎えながらも1950年頃には日本全体がひとつのシステムのごとく高品質・高信頼性を目指して目覚しい努力がなされたとデミング博士も語っておられました。その成果として、あの“ジャパン・アズ・No.1”とまで言われた善き時代も経験しました。しかし、その直後に襲ったバブル崩壊により、日本の産業は長らく明確な方向性を見失い停滞感を味わってきました。今回、私たちは一千年に一度と言われる大きな危機に遭遇しましたが、そこから革新を生み出せる日本人の稀有な能力を今こそ発揮し、危機を力に、再び世界をリードする品質革新のための元年にしたい、それが第52回品質月間委員会の願いです。その願いから今年の品質月間は、次のテーマといたしました。
「品質革新」という言葉には、製品・サービスの品質・信頼性をさらに高める活動だけでなく、それを生み出すシステムやサプライチェーン全体の最適化、更には価値感の異なるグローバル市場に適合する適正品質の提供といった意味も込められています。
一方、「No.1」という言葉については、人によって見方が異なり、「No.1よりOnly One」、「なぜNo.2ではいけないの?」といった意見を持たれる方がいるかもしれません。しかし、顧客志向を基本とする品質管理の考え方からすれば、顧客がその価値を認めてくれるOnly OneこそホンモノのOnly Oneであり、それは必ずその分野においてNo.1になるはずだという捉え方ができるでしょう。また先に述べた危機にあたって発揮される日本人の稀有な能力も、No.1を目指す気概があってこそ初めて達成される能力だとも言えるでしょう。したがいまして、そういう諸々の意味や思いも含めて敢えて「No.1」という言葉を今回の月間テーマに盛り込むことにしました。
一方、今や就労人口の70%を占めるサービス産業の生産性向上を前提とした品質確保・向上も日本再生のための喫緊の課題となっており、この分野も含めて「品質革新」を強く推進していく必要があると思っています。
以上より、「第52回品質月間」が、危機からの復興と新たな品質革新・革命を目指した取り組みの起点となり、日本全体でこの思いを共有し、一致団結していく善き機会となるよう関係各位の一層のご協力とご支援を心よりお願い申し上げます。
第52回品質月間委員会委員長
東京工業大学 教授 圓川 隆夫