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スペシャルインタビュー
第一弾

ISO/PC283日本代表エキスパート
中央労働災害防止協会 斉藤信吾氏に聞く

第3回 労働安全衛生マネジメントシステムとは 後篇

-新たな考え方
ISO45001には「リスク及び機会」という用語があります。リスクだけではなくて、機会もきちんと評価して必要であれば取り組もうというのは、今までの労働安全衛生マネジメントシステムの規格にはない考え方だと思います。また、「安全衛生機会」という、安全衛生のパフォーマンスに特化した用語を作り、独自に追加しています。安全衛生のリスクと安全衛生機会があるのです。安全衛生リスクは当然いままでも評価し、リスク低減対策がやられていたのですが、安全衛生機会も評価し対処しようという考え方があります。また、安全衛生のマネジメントシステムそのものがうまく回らなくなってしまうようなリスクと、マネジメントシステムが改善されて良くなる機会を、評価し組織として取組みましょうという要求事項が入っているんです。それは新しいと思います。


-要求事項
OHSAS 18001と比べたとき、ISO 45001の方が少しだけ要求レベルが高いように思いますが、今の社会によくフィットしているとは思います。ISO 45001を導入することで、新たにやることが極端に増えるということはないと思います。文書類も組織が必要のないものまで作る必要はありません。
当然、日本の法令でやらなければいけないことも要求事項になっているところがあります。日本は安全衛生の法令が結構しっかりしていますので、きちんと法令を守っていれば、それだけで満たしている要求事項はそこそこあるのではないかと思います。


‐認証について
基本的にはISOの共通テキスト(附属書SL)を採用していますので、9001や14001との関わりを意識して作ることはISOの中央事務局も考えていると思います。会議の中でも「そこは14001に合わせよう」などという意見は出ていました。定義の部分や用語の使い方など、結構14001に合わせているところもあります。複合マネジメントシステムというのを、ある程度は念頭に入れていますね。


ただ、個人的には、複合マネジメントシステムは反対なんです。それをやると監査で見るところが薄くなってしまい、安全衛生パフォーマンスは良くならないように感じています。




斉藤 信吾


中央労働災害防止協会 技術支援部次長 兼 ISO規格推進室長。 1987年に中央労働災害防止協会入社。 2003年から3年間マレーシアに赴任し、JICA(国際協力機構)の長期専門家としてマレーシア国立労働安全衛生研究所に労働衛生工学分野を技術移転。 2013年から作成が進められている労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格(ISO45001)について、日本代表エキスパートとして国際委員会に参加。また、ISO45001の審査員の力量規格(ISO17021-10)についても日本代表エキスパートとして国際委員会に参加するとともに、これらのISO規格のJIS(日本工業規格)の作成も行なっている。

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