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スペシャルインタビュー
第二弾

ISO/PC283日本代表エキスパート
株式会社テクノファ 平林良人氏に聞く

第4回 今後の展望

 まず、OHSAS 18001の登録組織の移行がどうなるかだと思います。今、OHSAS 18001の認証は、プライベート認証という言い方をしていて、「認定を受けていない認証機関」が審査をしています。しかし、現時点のIAF(International Accreditation Forum:国際認定協議会、JABもここのメンバー)ガイドライン案によると、認定されていない認証機関からの認証書を相互証明の対象にはできないと言っているんです。それだけ今度は信頼性を増すということが重要だということで、少しハードルが高くなると思います。
日本には、他に中災防JISHA方式、コスモス(COHSMS)基準などもあります。どの認証制度が勢力を強めることになるかはマーケットが決めることだと思うんですが、3~4年様子を見ていかないと何ともいえないと思いますね。


ISO 45001の認証が爆発的に広がるかは、インセンティブがあるかどうかで決まるのではないでしょうか。やはり結局のところ、ISO 9001もISO14001も、調達要件化、これが取得の動機としては最も大きいのです。現実的に、調達が要件化されないと認証は伸びない。大企業が子会社などに対して、事故を起こしてくれるなよと、社会的な不祥事につながるからと、調達に労働安全衛生の認証の要件を付ける。そういう動きが出てくればISO 45001の認証数が大きく伸びる可能性はあります。


くわえて、ISO 45001に取り組んでいる組織の労働災害が、どれだけ減るかという実績も重要な指標で、この指標がポジティブになるか次第ではないでしょうか。限りなく安全という世界はあるけれども、絶対に安全な世界はありません。我々が住んでいる世界は、いろんな危険を伴っています。その危険をいかに低くしていくか、この努力ですよね。
 どこに危険が内在しているのか、どのような危険源があるのか、どういう人々の思い違いやミスがあるのかということを、日々注意をする。それを単にそのときの思いつきではなくて、システマチックに取り組んでいる組織とそうではない組織とでは、絶対に事故の発生率は違うはずです。4~5年も経てば、有意差検定をすれば分かると思います。
ところが、安易に認証書だけ発行してしまうと、有意差検定をしても差が出てこないというのが、これまでのISO 9001とかISO14001の世界なんです。それではだめで、そうならない社会を作ることができれば、ISO 45001は普及すると思います。その意味は、認証が普及するということではなくて、規格に盛り込まれた事柄が組織の皆様に深く理解されるということです。
 事故にならないだけで、人間がいる限り、思い過ごしや勘違いというのは日々物凄い数起きているわけです。その人たちが集まっているのが組織ですから、事故が起きない方が不思議です。たまたま運が良かっただけなのです。それを、運が良かったではなく、そうならない可能性を追求していくのが、規格の中に書いてある様々な要求事項なんですね。


認証に関係なく、盛り込まれていることは本当に良いことが書いてあるから、組織はISO 45001に絶対取り組むべきだと私は思っていますよ。



平林 良人

株式会社テクノファ 取締役会長
セイコーエプソン英国工場長を経て、1993年に株式会社テクノファを設立。JAB評議員、JISマーク委員、各種ISO国内委員会委員を歴任する。また、TC176(ISO 9001)エキスパート、OHSASコンソーシアムメンバーを歴任し、ISO45001については、ISO/PC283日本代表エキスパートとして国際委員会に参加している。これまで多数の著書を出版。日本規格協会からは「やさしいシリーズ8 [2007年改正対応]労働安全衛生(OHSAS)入門」「OHSAS 18001:2007 労働安全衛生マネジメントシステム 日本語版と解説」「ISO共通テキスト〈附属書SL〉解説と活用」等を出版している。

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