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スペシャルインタビュー
第二弾

ISO/PC283日本代表エキスパート
株式会社テクノファ 平林良人氏に聞く

最終回 システム・オブ・システムズ

 システム・オブ・システムズ(System of Systems)という言葉を聞いたことありますか? 様々なシステムが今、世の中に出てきていますが、それらを一つのシステムに統合するということです。マネジメントシステムの世界も同じです。
経営というシステムは既に現存しているわけです。どういうシステムかというと、期首に事業計画を制定して、四半期ごとの計画を作って、チェックして、売り上げ、利益を確認していくというシステムです。トップの一番の関心事は、収益性にあるわけで、事業方針というものがある中に、ISO規格が品質方針を作れとか、環境方針を作れとか、労働安全衛生方針を作れとか言っても工夫しないとISO要求事項は宙に浮いてしまうことになります。同じことが「目標」、「プロセス」、「文書」などいろいろな要求事項に言えて、上手くそれらを棲み分けさせないと、バラバラになってしまいます。
 そうならないように、システム・オブ・システムズという概念を考えていかなければなりません。システム・オブ・システムズ自体は結構あちこちで言われていますが、マネジメントシステムの世界でも、事業経営というシステムがある中に、ISO 9001とかISO 14001、ISO45001のシステムをいかに上手く取り込んでいくかが重要なのです。
例えば、ISO9001は品質部署のお仕事だと言って、品質だけを個別に考えていてはだめだと思います。営業、設計、整合など日常の個々のお仕事の中に、品質要求事項をマッピングしないとだめなんですよ。トップが戦略や事業計画を作ったり、あるいは目標を決めたりする中に、当然、新規製品とか、その製品化という話が様々に展開されると思います。その中にも、品質だとか、環境配慮とか、安全確保などが入っていないとダメなのです。ISOマネジメントシステムの要求事項は、一つ一つの戦略、計画、目標の中に入り込んでいくのであって、あるISOマネジメントシステムの要求事項を一冊にまとめるのは違うと思うのです。そのマッピングする努力を組織がどの程度取り組むかによって、システム・オブ・システムズの完成度が上がると思います。


 内容的に言えば、ISO 45001でやることはOHSAS18001とほとんど一緒だと思います。ただ、ISO 45001は他のISO 9001なんかのマネジメントシステムや組織の行う経営システムと統合しやすい構造になっています。これはISOが2012年に発行した附属書SLのコンセプトに沿って、経営に入れ込みやすい構造、あるいは要求事項の共通化が図られたことで、これが一番の売りだと思います。


‐研修機関として、受講者の方々に求めていること


 私が会長を務めているテクノファでは、ISO 45001の中身を紹介する研修というのは、既に開催していますが、重要なのはそれを学ぶ目的だと思っています。
 我々の講師にも度々お願いしているのですが、来ていただける受講生の方には、何のためにこの勉強をするのかを折に触れて考えていただきたいと思っています。それは、安全で快適な職場づくりをするためであって、認証をとるためだけではないですよということを、研修機関としてはいつもお伝えしていきたいと思っています。もちろん、しっかりしたシステムを構築した後、第三者認証を受けることを否定するものではありません。



平林 良人

株式会社テクノファ 取締役会長
セイコーエプソン英国工場長を経て、1993年に株式会社テクノファを設立。JAB評議員、JISマーク委員、各種ISO国内委員会委員を歴任する。また、TC176(ISO 9001)エキスパート、OHSASコンソーシアムメンバーを歴任し、ISO45001については、ISO/PC283日本代表エキスパートとして国際委員会に参加している。これまで多数の著書を出版。日本規格協会からは「やさしいシリーズ8 [2007年改正対応]労働安全衛生(OHSAS)入門」「OHSAS 18001:2007 労働安全衛生マネジメントシステム 日本語版と解説」「ISO共通テキスト〈附属書SL〉解説と活用」等を出版している。

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