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スペシャルインタビュー
第三弾

ISO45001主任審査員
坂崎洋雄氏に聞く

最終回 ISO 45001は確実に普及していく

 都道府県によっては建設工事の業者評価の中でOHSAS 18001を運用している事業者を加点対象にしているところがありますので、今後はISO 45001の認証を受けている組織が同様になっていくことが予想されます。また、ある企業はもう取引先にISO45001を取るように要求していたり、グループ会社にISO45001を取得するよう指示を出した大企業があることも知っています。こうなると、法的な義務ではないですが、取引先の義務というところで半強制的な力を持ってくることになりますが、その結果として労働災害の件数を減らせるのであれば、それは歓迎すべきことと考えています。


 ただ、気をつけなければいけないのは、強制的に取れと言われたときに、嫌々ながら形だけの活動になってしまっている組織も残念ながらQMSやEMSの事例では見てきていますので、そうはならないようにしてほしい。せっかく導入するのであれば、やはりISO45001を上手く活用して災害件数を減らしていってもらいたいですね。


 それから、第三者認証を取得しなくとも、ISO 45001の普及は進んでいくと思います。というのも、特に外資系の企業を中心に、安全というものが非常に重要視されているんです。表向きは取引先への二者監査ということで、品質の監査といいながら、安全面とか環境面とかそういうところを見る外資系の企業が増えてきているんですね。災害の発生状況とか現場の安全管理の状況を確認して、日本の労働安全衛生法よりも厳しいことを指摘する企業もあるようです。特に外資系の企業と取引している組織にとってみれば、ISO 45001への取り組みというのはほぼ必須になってくるんじゃないかと思います。


― 組織の存続のために


 結局、製品がいくら高い品質を確保していても、安全の要因で操業がストップしてしまえば供給に支障を来たします。災害が起きれば、監督署が来て停止命令を発したり、事故調査をするまでその装置は動かないことにもなりますので、当然、生産がストップして納品にも影響する。


くわえて、災害を減らしていかないと、組織に若い人が入ってこないんです。これは組織にとって本当に大きな問題です。特に現在は製造業に若い人が少なくなってきているんですよ。いわんや災害が起きた企業には、ますます入社の申し込みがなくなる可能性が高いですから、企業は事業継続のためにも、やはり災害はゼロに持っていかないといけない。


それに、汚い職場なんかですと、働きたい人は少ないですよね。組織が事業継続する上でも、ISO 45001を活用して職場環境や労働環境を良くしていってもらいたいと思います。この規格にはそういうメリットもあるんですよ。


― 日本規格協会(JSA)の審査


 日本規格協会のISO 45001の審査の特徴は大きく三つあります。


 一つは、規格の字面ではなく意図を踏まえた審査を行っているところ。なぜ規格がこのようなことを求めているのかを考え、有効性の観点から課題を抽出するようにしています。これは規格の開発プロセスに携わってきた日本規格協会の強みだと思いますね。


 二つ目は、組織ごとの審査を行う点です。組織が十あれば、マネジメントシステムも十あって、それぞれ異なるわけです。その一つ一つに対してしっかりした審査を実施するために、まず事前準備を周到に行っています。具体的には、業界の常識だったり、組織の特徴だったりを調査した上で、組織のマニュアルを読み込むということです。準備にかける時間数は、他機関の審査よりも大きいと思いますね。


 最後に三つ目としてあげたいのは、審査のチェックシートです。審査機関によっては、組織の業種業態を問わず、同じチェックシートを使用しているところも珍しくないんです。でも、それでは画一的な審査になってしまう。JSAでは、組織ごと、審査ごとのチェックシートを作成することを徹底しています。そうすることで、審査員はその組織を深く知ることができますし、限られた審査時間を効率的に活用することができます。


 ISO 45001に取り組んでみようかとお考えの組織は、ぜひ気楽にご相談いただければと思います。


坂崎 洋雄


坂崎マネジメントコンサルタントオフィス 所長
昭和電工株式会社、(財)日本規格協会環境審査登録センター、(株)イーエムエスジャパンを経て、2002年に独立。
(一財)日本規格協会審査登録事業部のISO45001及びISO14001主任審査員として審査に従事。
(一財)日本規格協会研修ユニット主催のISO45001内部監査員研修、規格解説セミナー講師を担当。
(株)グローバルテクノ主催のISO45001審査員研修、内部監査員研修、規格解説セミナー講師を担当

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