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Vol.2 国立研究開発法人防災科学技術研究所


国立研究開発法人防災科学技術研究所


花島誠人 氏



第2弾は、JSA-S1016『災害情報共有のための共通データフレームワーク-SIP4D-ZIP』の開発主体である国立研究開発法人防災科学技術研究所様 【前編】となります。

現在、JSA規格の開発を検討されている方はもちろん、JSA規格に少しでも興味・関心がある方にこの制度の魅力をお伝えできれば幸いです。

JSA-S1016『災害情報共有のための共通データフレームワーク-SIP4D-ZIP』とは;
JSA-S1016は2023年1月25日に発行のJSA規格です。災害に対応する自治体等の各機関が利用するシステム同士が災害情報を相互にやりとりするための共通データフレームワーク “SIP4D-ZIP”の仕様について規定しています。本規格が普及することで、貴重な災害情報の相互共有が可能になり、災害対応における DXの促進や災害に対する国家レジリエンスの強化に繋がることが期待されています。

【前編】


── 日本規格協会、JSA規格の存在はご存じでしたか。
 過去にISO規格の開発に関わったことがありましたので、日本規格協会の存在はもちろん知っていましたが、JSA規格は作成するにあたって初めて知りました。


── JSA規格(JSA-S1016)を開発しようと思ったきっかけ、経緯などを教えて下さい。
 当初は東北大学災害科学国際研究所の今村文彦先生を中心に進めている防災ISOの規格にSIP4D-ZIPを取り込もうという動きがありました。しかしながら、ISO規格となると、発行までになかなか時間がかかるため、独立させてJSA規格として開発しようという流れになりました。それが2022年の春頃だったと記憶しています。



── 実際にJSA規格(JSA-S1016)を開発することになり(開発を通じて)、困難に感じたことはございましたか。

 規格づくり自体に関しては、特別困難なことはありませんでしたね。JSA規格自体がかなり柔軟に運用できる仕組みだったので、こちらの都合でやらせていただけるところが多く、助かりました。 ただ、SIP4D-ZIPは具体的なシステム間のインターフェースに関わる規格なので、どこまでを文書化するか、規格化するかは、かなり迷ったのは事実です。どこまで作りこめば、後々のことを考えたときに、運用上上手くいくのかの判断は悩みましたね。そのために抽象仕様、実装仕様にわけて、規格化する部分と参考とする部分をどこにするかを検討しました。
 その検討は、所属する防災科学技術研究所(以下、防災科研)で規格開発グループをつくり、防災システムを専門とする大学の先生や、開発をずっと一緒にやってきた企業の方、それに実装するベンダー側の方など、技術面に明るい方に入っていただき議論していきました。


──貴所が考えるJSA-S1016の特徴(セールスポイントなど)を教えて下さい。

 まず、防災情報を扱うシステムはいくつかの企業が開発していて、それぞれ都道府県に納入している状況です。つまり、国が一つのシステムを作って、みんなこれを使いなさいというものにはなっていない。例えば、南海トラフ地震のように、被災自治体が数十にのぼるような広域の災害が起きた際に、都道府県間・自治体間の情報共有をどうやってスマートに実現するのか、そのための規格が存在していませんでした。
 そこで、異なるシステム間の防災情報をどのように共有するかという課題に対して、SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)というソリューションをつくりました。このSIP4Dと災害対応機関のシステムとの連接を広めていくうえで、個別に仕様を調整していくのではなくて、災害の時に最低限必要な情報の共有をカバーできる標準化を目指して規格をつくりました。その意味でJSA-S1016の特徴は、異なる組織・異なる情報システム間で、いかに相互に・自動的に情報を共有しあえるか、それを実際に実現し得る規格だということです。
 このような規格は世界的にみれば全くなかったとは言えませんが、往々にして大がかりな仕様になりがちです。汎用的にしようとかいろいろなシステムをすべて含もうと思うと複雑になってしまいますよね。だから、できるだけシンプルに、コンセプトを理解できるようにして、実装においてはシステム間のすり合わせを許すという落としどころにしました。それから、副次的な効果として、たとえば都道府県がSIP4Dとの連接を前提として防災情報システムを調達するとき、仕様書に「SIP4Dとの連接については JSA-S1016に準拠すること」と書けるようになればよい、と思っています。