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城内 博先生のコラム

令和4年5月公布、労働安全衛生法関係政省令の改正によって日本の化学物質管理が変わります!
国際連合GHS専門家委員会 日本代表でもいらっしゃる、城内博先生に転換期にある現在の日本の化学物質管理について、ご執筆いただきました。

化学物質管理の大転換―GHSそして「自律的な管理へ」―

(独)労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
化学物質情報管理研究センター長
国際連合GHS専門家委員会 日本代表
城内 博

 人は狩猟採集生活時代から、五感を通してあるいは経験から危険性・有害性を認知し、回避する方法を学び、これらを口承や文書で伝えてきた。しかし化学物質にはこれらの五感や経験が役に立たない、つまり容易には認知できない危険性・有害性をもつものが多い。危険性・有害性が認知できなければ、これによる危害を回避することは困難である。化学物質による危害を防ぐためには、それのもつ危険性・有害性を「見える化」し、認知させる必要があるが、このためのシステムを構築するまでには数多の犠牲を払い、また科学技術の進歩を待たなければならなかった。
 2003年に国連から出された「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:GHS)」はまさにこの化学物質の危険性・有害性を世界統一基準で「見える化」するシステムであった。
 我が国の化学物質管理は、令和4年5月公布、 労働安全衛生法関係政省令の改正により、「法令準拠型」から「自律的な管理」(「自主対応型」ともいう)に大転換しようとしている。この「自律的な管理」において最も重要な化学物質の危険性・有害性の情報伝達はGHSを基盤としており、この大転換はGHSにより可能になったと言える。ここではGHSについてその策定の背景と意義及び国内法令への導入とその役割について振り返り、さらにこれから始まる化学物質の「自律的な管理」の概要について紹介する。

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化学物質管理の大転換-GHSそして「自律的な管理へ」-

1.国連文書GHS策定の背景と意義
 化学物質による危害とその対策の歴史
 「法令準拠型」から「自律的な管理」への転換
 GHSの策定経緯
 GHSの概要
 国際的な GHS 実施の状況
 化学物質管理の国際的な潮流とGHSの役割
2.日本におけるGHSの導入とその役割
 日本の化学物質管理体制
 日本の法令とGHSの違い
 日本にGHSを導入する際の壁
 GHSの表示(ラベル、SDS)が導入されている法令
 GHSのJISへの導入
 GHSが法令やJISに導入された経緯
 GHS導入に関する国内法令等での課題
3.法令準拠型から自律的な管理へ
 自律的な管理のための改正のポイント

―本件に関する参考サイト―
化学物質による労働災害防止のための新たな規制について(厚生労働省HP)
職場の化学物質管理総合サイト(労働安全衛生総合研究所HP)