アクセス アクセス お問合わせ お問合わせ 文字サイズ icon_fontsize
En

Christopher Rastin氏へのインタビュー:ドイツにおけるサービスエクセレンスの動向及びISO/TS 23686の発行について

2022/12/23

ISO/TC312/WG1(原則、モデル及び測定)にて開発が進められていたISO/TS 23686(サービスエクセレンス-サービスエクセレンスの測定)が2022年10月6日に発行されました。

■規格開発の経緯
本規格は、顧客の声の分析に加えて、組織の弱点を検知するためのサービスエクセレンスの測定システムの規格化を行うことが必要であるという考えのもと、開発がすすめられました。
元々、フランスがコンビーナを担っていたWG3(計測)にて開発が進められていましたが、同時期に開発が進められていたISO 23592(原則及びモデル)をベースにISO/TS 23686(測定)を作ることが必要と判断したため、2019年にISO/TS 23686の開発を一時休止してISO 23592の発行を待ちました。その後、2021年1月開催の第6回総会にて、フランスからドイツにコンビナーシップを、WG3からWG1に担当WGを移管し、開発を再開することが承認されました。

■規格概要
本規格は、サービスエクセレンスのパフォーマンスを測定するための指標及び方法を規定するものです。サービスエクセレンスのパフォーマンス、特に優れた顧客体験と顧客歓喜の向上に最も影響を与える要素(注)を測定するために使用できる一連のアプローチを提供しています。
(注)基本規格ISO 23592:2021に記載されているサービスエクセレンスモデルの4つの次元と9つの要素。

■インタビュー
今回は、TC312/WG1プロジェクトリーダーを務めるドイツ大手エネルギー企業E.ONのChristopher Rastin氏に、ドイツにおけるサービスエクセレンスの動向及びISO/TS 23686の発行について、お話を伺いました。

日本規格協会(以下JSA):
まずは、自己紹介をお願い致します。

Christopher Rastin氏(Rastin氏):
私はオタワ大学で心理学と犯罪学を学び、初期のキャリアでは、カナダ矯正局や王立カナダ騎馬警察による先住民警察サービスの犯罪者治療プログラムや犯罪者プロファイリングの研究を行っていました。2013年、モントリオールからデュッセルドルフに移り、2018年からはE.ONでブランドと顧客体験の調査を行っています。2022年よりE.ONのグローバルリサーチ&インサイトチームを率いています。

JSA:
では、ISO/TS 23686についての質問です。この規格は、どのような目的で開発されたのですか?

Rastin氏:
この規格は、複数の業種におけるサービスエクセレンスプログラム開発のための基本テンプレートを提供すると同時に、業種に合わせた形で実施するための柔軟性を提供するために開発されました。この規格は、サービスエクセレンスプログラムのすべての要件に確実に対処し、測定し、それらの測定値を改善行動戦略に転換することを可能にするために、焦点を当てるべき原則の中核セットを提供するものです。

JSA:
この規格を使って企業などの組織は何ができますか。規格のポイント、開発の目的を教えてください。

Rastin氏:
企業は、この規格を基本テンプレートとして、測定戦略を基礎から開発したり、サービスエクセレンス戦略のあらゆる側面に対応できるよう、サービスエクセレンスの測定方法を修正・適応させたりすることができます。

JSA:
続いて、E.ONについて質問です。E.ONとはどのような会社ですか?会社の概要について教えてください。

Rastin氏:
E.ONは、ヨーロッパのエネルギーネットワークとエネルギー関連インフラの最大手であると同時に、5,000万人以上の顧客に高度な顧客ソリューションを提供する企業です。総従業員数は75,000人以上で、15カ国に拠点を置いています。2つの持続可能な成長分野に注力し、エネルギー企業RWEの子会社innogyの買収により、ドイツと欧州のエネルギー転換を推進する理想的な体制を整えました。

JSA:
E.ONでは、ISO/TS 23686のテーマである「測定」に関する取り組みついて、どのようなものがありますか。

Rastin氏:
私たちの測定テーマは、ブランドと顧客体験のパフォーマンスを測定し、モデル化することであり、これらの測定結果は、パフォーマンスを改善するための介入(顧客体験の戦略、ブランドキャンペーンの実施など)につながっています。これらの戦略は、パフォーマンスと効率性を評価するためにモニタリングされ、測定されます。

JSA:
その「測定」に関する取り組みで、E.ONはどのような成果を上げていますか? E.ONの取り組みについて、より具体的に知りたいです。

Rastin氏:
E.ONは、2020年以降、商品顧客数を100万人以上拡大し、消費者がE.ONを市場で信頼できるパートナーとして見ていることを示しています。さらに、エネルギーソリューション(電気自動車充電、ソーラーパネル)の販売も、顧客重視の姿勢の結果、拡大を続けています。顧客調査によって私たちの優れた点と改善すべき点をより具体的に理解することができ、顧客ロイヤルティや顧客嗜好の向上に繋げることができました。

Christopher Rastin氏プロフィール
ドイツに本社を置き、電力・ガスなどを供給するヨーロッパ有数の大手エネルギー会社E. ONのグローバルインサイト&カスタマーエクスペリエンス、グローバルリサーチ&インサイトリーダー。
市場セグメンテーションロジックを含むモデルの開発・実装、ネットプロモータースコアとシステムの設定・実行(ドライバー分析、因果関係のモデリングを含む)に取り組む。

●サービスエクセレンス規格・書籍のご案内

 >ISO/TS 23686:2022 サービスエクセレンスのパフォーマンスの測定

 >JIS Q 23592:2021 サービスエクセレンス-原則及びモデル

 >JIS Q 24082:2021 サービスエクセレンス-卓越した顧客体験を実現するためのエクセレントサービスの設計

 >サービスエクセレンス規格の解説と実践ポイント

●その他、TC312の最新動向、エキスパートによるコラムなど、サービスエクセレンスに関する様々な情報はこちら