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スペシャルインタビュー
第三弾

ISO45001主任審査員
坂崎洋雄氏に聞く

第3回 ISO 45001の審査

 ISO 45001はQMSやEMSと同じようにPDCAを回す要求事項です。最初はなかなか難しいかもしれませんが、審査では、PDCAのサイクルを回すことができる仕組みができ上がっているかどうかを重点に確認しています。個々の要求事項に適合していても、全体的に上手くPDCAが回っていなければ、いわゆる効果、パフォーマンスがよくなりませんので、やはりこの部分を一番重点に見る必要があると思っています。


 次に、トップのリーダーシップです。下に任せきりにしていないかどうか。トップが四六時中つきっきりというのはあり得ませんが、例えば安全週間とか衛生週間のときには何らかのメッセージを発するとか、職場巡視してハッパをかけるとか、そういう何かの折にリーダーシップを発揮しているかどうかということを確認しています。


 三つ目は、安全衛生活動が、日常業務、担当業務の中に組み込まれているかどうか。例えば目標の展開とか計画の実施事項などをちゃんとやっているかどうかです。


 それから、もちろん、災害件数が減るとか、ヒヤリハットが減るとか、5S活動がなされているとか、そういう安全衛生パフォーマンスの実績を見せていただいています。資源を投資して活動する以上は、やはり何らかの成果が出ないと組織としても損失ですので。


 他には当たり前ですが、法令遵守ですね。我々は労働基準監督署の監督官ではありませんが、ISO45001では労働安全衛生法等の法律を守るというところを非常に重要視しています。ISO14001もそうですが、認証を取得したのだけれども法違反的なところが散見されるという反省から、ISO14001も今回のISO45001も法律の遵守ということが強く求められています。法律を守れるプロセスができているかどうかという観点から確認しています。


 そして最後は、やはり全員参加ですね。全員参加の活動を展開しているかどうか。担当者だけが頑張っているのではないということを確認しています。組織の大小にかかわらず、そこのトップあるいは部門長のリーダーシップがしっかり発揮されていれば、当然、部下の方たちはついていくはずなんです。


― 審査場面の一例(ヒヤリハット)


 例えば、ヒヤリハットで言えば、まず収集の方法が上手くいっているかどうかを見るようにしています。正直言って、ヒヤリハットはなかなか本人から率先して言うことは少ないんですよ。ですから、発掘というか、いかに聞き出しているか。そこら辺の状況を確認させてもらうのがまず一点。それから、せっかくヒヤリハットが上がってきたのだから、その後の処置、フォロー、対応をどうしているのかの確認がもう一点ですね。残念ながら聞きっ放しの組織もあります。


 一般的には、ヒヤリハットを出した本人に「注意しろ」ということで終わってしまっている組織だとあまり上手くいかないんです。やはりそれを共有化したり、あるいはそれを手順書に反映するとか、対策に結びつけるまでやっているかどうかが肝心なんですよ。なるべくヒヤリハットを活用してもらうというふうに審査の中で話をしますが、コンサルティングになってはいけませんから。集め方にしても幾つかの事例や方法を提示して、ちょっと検討してくださいという感じですね。その中の一つでも組織が採用してくれれば幸いです。



次回は「第4回 ISO 45001で労働災害は減らせる」を2018年9月21日(金)にお届けする予定です。お楽しみに!

←第1回ISO 45001は先取り型の労働安全衛生活動
←第2回組織が取り組む際に留意すること
第4回ISO 45001で労働災害は減らせる→
第5回統合マネジメントシステムの構築→

坂崎 洋雄


坂崎マネジメントコンサルタントオフィス 所長
昭和電工株式会社、(財)日本規格協会環境審査登録センター、(株)イーエムエスジャパンを経て、2002年に独立。
(一財)日本規格協会審査登録事業部のISO45001及びISO14001主任審査員として審査に従事。
(一財)日本規格協会研修ユニット主催のISO45001内部監査員研修、規格解説セミナー講師を担当。
(株)グローバルテクノ主催のISO45001審査員研修、内部監査員研修、規格解説セミナー講師を担当