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スペシャルインタビュー
第三弾

ISO45001主任審査員
坂崎洋雄氏に聞く

第4回 ISO 45001で労働災害は減らせる

 データとして、平成29年度に労働災害で死亡した人が978名います。4日以上の休業をした人が12万人。それから、業務上災害した人が55万人。この数値が多いか少ないかは各人の見解が分かれると思いますが、特に死亡事故、死亡災害が一件でも減らすように、すべての組織が一刻も早く労働安全衛生マネジメントシステムを導入していただいて取り組むことを期待しています。


 個人的な話ですが、私もある会社に入社して、一年目に工場で死亡事故が起きました。ちがう部署でしたが、社葬という形でお葬式をやりまして、そのとき遺族の小さなお子さんの姿を見て非常に胸を痛めた経験があるんです。その当時は死亡災害が6000名強の時代でしたから、そこからはかなり減少したとはいえ、毎年まだ1000名近い方が亡くなっているという現実がありますので、あらゆる組織が何とかして災害を減らす努力をしてほしいと思っています。そのためにISO 45001は有効なツールであることは間違いありません。


 ただ、安全も環境も品質もそうですが、導入したからすぐに結果がついてくるわけではないんです。それでも諦めずに事務局中心に積極的にシステムを回していくという姿勢が大事なんです。ISO45001の特徴の一つは未然防止ですから、規格の要求事項に従ってマネジメントシステムを構築して運用していけば、いずれ絶対に効果が上がってくると私は思って、審査もやっています。


― 近年の労働災害


 特に最近は、設備的な欠陥での災害よりも、人的要因によって、例えば作業者自身や作業方法なんかによって、怪我をしているケースが非常に多くなっています。例えば、挟まりの災害があれば、その挟まれる箇所を防いだりカバーしたりということで対策をとってきましたので、カバーすれば挟まれる災害はなくなりますね。そういうふうに設備的な対応は労働安全衛生法等に基づいて、どの組織も取り組まれていますけれど、今はうっかりしたとか、本来の手順から手を抜いてしまったとかという災害が増えてきているんです。その意味でも、全員参加といいますか、職場全員の安全意識を高めていくことが必要ですので、安全衛生担当者はそこにISO45001を活用するのが良いのではないかと思います。


― 人に合わせた対応


 ISO45001の中には、人に機械を合わせなさい、調整しなさいという考え方が含まれています。働く人を中心に考えて、それに合った対策を進めなさいというような要求事項もあるんですね。そこには、働く人の多様化という観点があるように思います。定年延長により働く人もだんだん年齢が高くなってくると、若い人ばかりでなく、そういう中高年者に合わせた仕事あるいは設備、それからインフラとかを整備する必要があります。そうすることで災害は減っていくと思います。もちろん、なかなか難しい点もありますが、やれるところから、徐々にでも人に合わせた作業環境を整備していく必要があります。


 例えば、表示一つにしても、若い人は目が良くて見えますが、年をとってくると小さな字では見にくいので、文字を大きくするとか。あるいは職場をバリアフリーにするとかも一つです。つまずくところがなくなれば、高齢者も若い人も同じように転倒の防止で災害が減っていきますから。そういうふうに人に合わせた職場環境を作っていく。


 あとは、例えばベルトコンベヤーで物が流れてくるような現場なら、このスピードも、若い人なら対応できるんだけど、年配者だと難しいこともありますよね。そうであれば、そのスピードを緩くするという考慮もしていかなければいけないわけですよね。


 年齢以外でも、外国人労働者がいる組織であれば、マニュアルを英語だったり中国語なんかで用意する必要もあるかもしれない。 いずれにせよ、安全衛生管理は、昔に比べて、今は大変だと思います。個人個人に合わせた対策を進めていかなければいけないということですので。同じ人でも、日によって体調は違います。体調不良だと、ちょっとぼうっとしちゃうことがありますよね。それに作業所が暑ければ、どうしても注意力が緩慢になって、思わぬ災害を起こしたりする。熱中症じゃなくても、ほかの災害を起こす可能性もありますので、やはり人に合わせた形での対策というのは、これからますます重要になってくるということですね。


次回は「第5回 統合マネジメントシステムの構築」を2018年9月28日(金)にお届けする予定です。お楽しみに!

←第1回ISO 45001は先取り型の労働安全衛生活動
←第2回組織が取り組む際に留意すること
←第3回ISO 45001の審査

坂崎 洋雄


坂崎マネジメントコンサルタントオフィス 所長
昭和電工株式会社、(財)日本規格協会環境審査登録センター、(株)イーエムエスジャパンを経て、2002年に独立。
(一財)日本規格協会審査登録事業部のISO45001及びISO14001主任審査員として審査に従事。
(一財)日本規格協会研修ユニット主催のISO45001内部監査員研修、規格解説セミナー講師を担当。
(株)グローバルテクノ主催のISO45001審査員研修、内部監査員研修、規格解説セミナー講師を担当

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