【第1回】組織の食品安全のパフォーマンスを経営に活用する
ISO 22000(食品安全マネジメントシステム̶フードチェーンのあらゆる組織に対する要求事項)はISO9001(品質マネジメントシステム)と同様「組織の戦略上の決定」,すなわち組織が自発的に経営課題の一つとして食品の安全性確保のためのしくみを構築し運用することを意図している。
2018 年の改訂では,マネジメントシステム共通の枠組み(規格の箇条の表題,順序,要求事項の本文の言い回し,用語の定義等をマネジメントシステムで共通化。いわゆる,附属書SL)が採用された。要求事項として「リスクと機会」が加わった。食品及びその提供に潜在するリスクのみならず,食品安全に関わるリスクが経営に及ぼす影響や,事業展開に伴うリスクが自社の食品の安全性に及ぼす影響についても管理対象であることが要求事項の中で明確になった。
自然環境の変化や食糧調達の範囲や形態などフードチェーンの態様の変化,組織の統廃合など食品安全に影響する環境や経営環境は変化し続けている。伴って,食品安全に関する事故の発生原因や影響の程度,範囲についても,判断のための視点や基準,対策方法の見直しが必要である。これらの変化にうまく適応できるように運用することで,ビジネスチャンスも広がることが期待される。
同時に,食中毒事故の発生による人の健康への影響は事後に修正や補填はできない。そして事故発生による組織に対する信頼への影響はほかのマネジメントシステムで取り扱うリスクによる影響と同様,回復への道のりはかなり長いことは,過去の事例からも実感する。
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