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ハザード管理のありようは組織と働く人々の良心②

 例えば,お弁当に入れる冷凍コロッケの調理を想定してみる。未加熱の冷凍コロッケは,油で揚げなければ食べることはできないので,油で揚げる工程はCCP とはせずに,OPRP として,コロッケをフライヤーに投入する際の油の温度と揚げる時間を決めて管理することとする(管理手段Ⅰ)。しかし,受注が多くなり1 回当たりに揚げるコロッケの数が増える時期は,CCP 工程として,中心温度と時間を測定し,確実に中心温度が75℃到達後1 分以上の加熱をする(管理手段Ⅱ)。揚げる工程を常にベテランの調理師が担当する場合には,コロッケの色や油の状態を確認して加熱具合を判断する(例:きつね色になるまで揚げる)ことをOPRP と設定することも可能であろう(管理手段Ⅲ)。いずれも管理としては妥当である。ただし,管理手段ⅠとⅢの場合には,これらの処置基準の妥当性の確認(例:1 日1 回,加熱条件と中心温度を確認する)は必要である。


 このように管理方法の選択肢や利用できる資源の可能性をどのように活用するかは,組織や経営判断が必要な場面もあるだろう。マネジメントシステムとしての意義はここにある。


 ハザードと管理手段との対応が客観的でほぼ迷いなく設定できるCCP 工程に比べて,OPRP における処置基準は,その根拠や基準には議論や検討の余地があるだけに,悩みどころである。現場の人々がルールの目的や安全性への影響を理解して実行できるかどうかも影響する。しかし,議論や検討をすることが,ハザード分析に基づく評価や予測のための情報や考察の質を高めるとの期待もできる。経営者が常日頃,従業員,現場責任者に対して食品安全に対する認識,行動基準をどのように指示しているか,どう評価しているかが現れる場面でもある。いわば,OPRP の決め方は,その検討過程を含めて,組織と働く人々の良心の現れとも捉えることができるのではないか。


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